どこかに所属することで得られる安心感ってありませんか。
大人も子どもも同じなのではないかと思います。
子どもがまだ幼いときは、子どもの居場所は「家」であることが多い。「保育園」や「幼稚園」に通いはじめると、「家」以外の居場所が増えます。そこでは、家とは違った顔を見せることもありますよね。
習い事をはじめれば、またひとつ居場所が増える。そんなふうに、わたしたちは、居場所とともに、新しい自分を発見したり、出会いに刺激を受けたりしながら成長していきます。
そんな子どもの世界…、学校に入ると子どもたちの居場所が学校にシフトしていきます。一日の半分を過ごす学校。「学校」と「家」、そこに「習い事」そんな3つの居場所を行き来している子どもたちが多いのではないかと思います。
では、不登校の子どもたちはどうでしょう。
「学校」が居場所とはならず(なれず)、一日の多くを「家」で過ごすことが多いのではないでしょうか。習い事に通っている子もいるかもしれませんが、「学校の友だちに会うのがこわい」「家の外に出るエネルギーがない」という子も多くいることと思います。
そんな不登校の子どもたちにとって、「家」以外の居場所がなぜ必要なのか。
今日は、「子どもたちにとってなぜ家以外の居場所が必要なのか」をお伝えできたらと思います。「家にずっといて大丈夫なのか…」「フリースクールってやっぱり行った方がいいの?」そんなお悩みをおもちの方、少しでも参考にしていただけたらうれしいです。
不登校の子どもたち「家」以外の居場所は必要?
まず、不登校の子どもたちにとって「家」以外の居場所は必要か?
その前提として、子どもの心と体の状況によって異なります。心も体もエネルギー不足の状態の子の場合、外に居場所を求める前に、まず家でじっくりと休養をとることが先。心と体のエネルギーチャージを優先するには、あえて家にいることが大事な場合もあります。
子どもの今の状況をよく把握した上で、家にいた方がいいのか、外に居場所を探す時期なのかを判断することが大切です。
子どもたちの居場所は、1つより2つの方がいいことが多いですが、大事な前提はその居場所がその子の安全地帯になっているかどうかです。たくさんの居場所があっても、実はどこも居心地が悪いのであるようでは居場所の意味がありません。心地いい場所がまず1つはあること。それが「家」であること。そこがあって、さらに2つ目の居場所を…となるのが理想ではないかと思います。
では、具体的に、「家」以外の居場所が必要なわけをご説明します。
「家」以外の居場所が必要なわけ① 逃げ場ができる
学校に通っている子の多くが「家」と「学校」で、ちょっと違った顔を見せます。中にはまったく同じという子もいますが、よくよく観察してみると小さな違いは誰もがもっています。
「家の顔」と「学校の顔」、「家族に見せる顔」と「友だちや先生に見せる顔」の違いです。
子どもたちは、本当に敏感で適応能力が高いです。大人によって態度を変えたり、人によって見せる顔が違ったりするものです。そんな子どもたちにとって「家」は大きな土台。それでも、家の中がいつも居心地がいいとは限りません。
お母さんに小言を言われたり、妹や弟のわがままにつきあったり、上の兄弟から理不尽な扱いを受けたり… そんなことも時にはあるでしょう。
そういう時「ちょっと公園で遊んでくる」「習い事で好きなことに没頭する」と、ちょっと環境を変えるだけで、子どもたちの気持ちが晴れることはよくあること。これが、居場所の力です。
ちょっと離れる、逃げることができる場所があるかないかは、実は子どもたちの心に大きな影響を与えます。不登校の子どもたちにとって、家以外の居場所があることは逃げ場を作ってあげることにつながります。
「家」以外の居場所が必要なわけ② 相談できる
幼児期は、なんでも親に話し相談していた子どもたちも、小学校に入ると少しずつ親から離れていきます。「親になんでも相談できる」という子がいる一方で「親だから相談しにくい」という子もいるようです。
教員時代に中学年以上の子どもたちからよくそんな声を聞きました。「忙しい親に心配をかけたくない」「親に話したら悲しむんじゃないか」「恥ずかしくて親には相談できない」
思春期に入ると、子どもたちは親とさらに距離をとるようになります。これは成長過程なので、それほど心配することはないかと思います。でも、大事なことは親から少し距離をとったときに、相談できる大人はいるのか。信頼できる大人がいるかどうかです。
親に話しにくい、相談しにくい話を聴いてくれる大人がいるかは、とても重要です。学校の先生で信頼できる人がいるのか、親戚のおじさんやおばさんが近くにいるのか、習い事の先生が信頼できるのか、そんな存在があれば、親も安心することができるのではないでしょうか。
不登校の子どもたちにとって、学校の先生とは接点が少なかったり、中には学校の先生が原因…という場合もあるので、学校の先生に相談するというのは、なかなかむずかしいのではないかと思います。家以外に居場所があると、その居場所にいる信頼できる大人に相談できるかもしれません。
また、親としても相談できる場があることは、心強いもの。一人で抱え込まず、一緒に悩んでくれる場、考えてくれる人がいることは、とても重要です。
「家」以外の居場所が必要なわけ③ 新しい自分になれる
「家」で過ごしていると、どうしても「家の自分」像ってできあがってきますよね。それが、外に新しい居場所ができるとどうでしょう?
ちょっと新しい自分になってみたり、家の自分とは違う自分を演じてみたり…そんなこともあるのではないでしょうか。
家の自分像を壊して、新しい自分になるのは、ちょっと大変。でも、新しい場所に行けば、けっこう簡単に新しい自分になれたりします。
いろいろな自分を発見し、自分を広げていくこと。そうすることで、自分自身の新たな可能性を見つけたり、自信をつけたり、成長していくことにつながります。
誰でも、新しい場所に行くことは勇気がいること。でも、その場所が自分の居場所になってしまえば、どんどん可能性が広がることでしょう。
「家」以外の居場所が必要なわけ④ 安心できる
不登校の子どもたちにとって、一番マイナスな影響を与えているのが「みんな」の存在ではないかと思います。みんなは学校に通っている、みんなはできている、そんな「みんな」と自分を比較して、自信をなくし、自己肯定感を失ってしまう子もいるのではないでしょうか。
でも、「みんな」と自分をつなぐ接点がみつかれば、一人じゃないことを実感できます。
たとえば、フリースクールに通い始め、そこで同じ境遇の子と出会ったら、自分だけじゃなかったと思えるかもしれません。「一人じゃない」という安心感は、子どもたちの成長に大きな影響を与えます。
「大丈夫」という土台があれば、失敗してもうまくいかなくてもチャレンジしてみようと思えるし、「一人じゃない」という安心感は、傷をやさしく癒し一歩前へ踏み出す勇気になるでしょう。
家にいるだけだと「一人」だった孤独が、外の居場所を見つけるだけで「一人じゃない」と実感できるようになります。「大丈夫」居場所は学校だけじゃない。家だけでもない。そんなふうに考えられるだけで、心が軽くなる子もいるのではないでしょうか。
「家」以外の居場所が必要なわけ⑤ 刺激を受ける
心が弱っているときに、刺激は必要ありません。
でも、心がある程度満たされ、休養でき、そろそろ動き出したいなぁと思い始めると、子どもたちは刺激を求めるようになります。
子どもたちは、本能的にワクワクドキドキする体験に惹かれます。ドキドキやワクワクは人によって違いますが、一人ひとりのドキドキやワクワクを大事にしてあげると、子どもたちの目はどんどん輝きます。
その子がドキドキ・ワクワクする経験をさせてあげる、経験できる場所を探す。まだまだ今の日本では、不登校の子どもたちがドキドキやワクワクを体験できる場は少ないですが、そんな場所がたくさんあれば、子どもたちの可能性はどんどん広がると思います。
さらに、子どもたちが刺激を受けるのは、その体験からだけではありません。その場に一緒にいる仲間たちからも刺激を受けます。
この仲間たちからの刺激で、子どもたちはびっくりするほど成長します。長年、たくさんの子どもたちと接してきて実感していますが、子どもたちは一対一で学ぶよりも、一緒に切磋琢磨できる仲間がいた方が楽しみながら、学ぶことができるようです。
仲間の力は大きい。もちろん、この仲間というのは、同学年の子どもたちとは限りません。年齢に関係なく、一緒に切磋琢磨できる存在であれば、大人だろうと、年上・年下だろうと関係がないように思います。
【まとめ】家以外に居場所があることは、子どもにとってプラスになる!
「家」以外に居場所があることで、子どもにどんな影響があるのかをお伝えしてきました。
「家」以外に居場所があること…と書くと、なんだか「家だけにいてはダメなのだろうか…」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。でも、そういうことではありません。
「家にいて安心できること」これが一番です。大前提です!
そこができていたら、そのうち子どもたちが自分から動き出したくなる時期がやってくると思います。そのときに、そっとサポートしてあげれば大丈夫です。大人が焦って動き出しても、子ども自身はまだ準備ができていないこともあります。
家以外の居場所探しは、焦らなくても大丈夫!
でも、必要になったときに居場所があれば、子どもたちは安心して「自分」と向き合うことができるのではないかと思います。
居場所というと、一見どこか通わせないといけないのではないか…と思うかもしれませんが、フリースクールや習い事でなくても、おばあちゃんの家とかでもいいと思うんです。
その子が「家」以外に安心できる場所。安心できる人。
それだけで十分。そんな居場所があれば、また次の居場所も作りやすくなるのではないかと思います。
大丈夫。一人じゃない。
居場所はあります。まだ見つけていないだけ。
今、家にいる子どもたち一人ひとりに合った居場所が見つかりますように…