みなさん、「普通」という言葉を使っていますか。
けっこう日常的に使う言葉ですよね。もちろん、私も使っています。
ただ、これを人にあてはめて使うとき、ふと「普通って誰の基準だろう?」と感じることがあります。
特に、子どもに対しては、私自身なるべく使わないように気をつけてきました。それは「普通」という言葉は、子どもにとって、とても曖昧だから…。できる限り、具体的でわかりやすい言葉を使う方が、子どもたちには伝わりやすい。
自身が子育てをするようになると、普通という言葉に違和感を覚えるようになりました。自分の「普通」を子どもに押し当てていないか…と、疑問をもつようになったのです。
今日は、日ごろ何気なく使っているかもしれない「普通」について、少しシェアできればと思っています。今、子育て中の方、まわりと比べる癖がある方、一緒に考えるきっかけにしていただければ、うれしいです。
そもそも「普通」って何?
「普通」の意味を調べると…
普通
①いつでもどこにでもあって、めずらしくない・こと(さま)
②ほかとくらべて特に変わらない・こと(さま)
③特別ではなく、一般的である・こと(さま)
スーパー大辞林より
「そうだよね…」という印象ではないでしょうか。
「普通」という言葉、人に向けて使われることもありますね。
「普通の人」「普通の主婦」「○○って、普通だよね」「普通は、こうやるよ」「普通は簡単にできるんだけど…」など、大きな意味をもたずに使っている方も多いのでは?
実際、私も、使っていました。
でも、娘が生まれて、変わりました。
それは、娘の成長過程で、まわりの子が「普通」にできていることが、我が子にとっては「普通」ではなかったからです。その経験がきっかけで、「普通」って何?って考えるようになりました。
「普通」の反対語は「特別」です。でも、人によって「普通ではない=特別」は、プラスの意味として感じられない人もいるのではないかと思います。もしかしたら「普通ではない=異常」のような意味合いで感じられる人もいるかもしれません。
「普通」がもたらす息苦しさ
私自身は、どちらかというと「普通」の人間です。…だと思っています。でも、時に「普通」という枠で、自分の可能性を小さく見積もりがちな傾向があります。
また、我が子はどちらかというと「普通」という枠にはおさまらないタイプ。いろいろと私の思う「普通」の枠外の行動をします。
ここで出した2つの「普通」、一体だれが決めているのか?
私自身なんですよね。自分のものさしで「普通」か「普通じゃない」かを決めている。同じ状況でも、ものさしが変われば、「普通」や「普通じゃない」という枠も変わります。
娘からしたら、自分の行動はきっといたって「普通」なのだと思います。
この「普通」のものさしを自分自身にあてはめて使っているだけなら、だれも傷つかないのですが、これを他の人に向けて使うとどうなるのか…?
ときに、傷つけてしまったり、枠にはまらなくてはいけない息苦しさを感じさせたり、することもあるのではないでしょうか。
「普通にしなさい」
「普通、みんなはできているのに、なんでできないの?」
「普通は、簡単にできることだよ」
「もっと普通にやって。それじゃだめ!」
自分にとっては「普通」なのに、誰かの「普通」に合わせなければならないって、けっこうしんどいこと。それを強要してしまうこわさが「普通」にはあるように感じます。
「普通」という言葉は、人によって違うものさしだということを理解した上で、使うこと。それが、大事!特に、子どもとかかわるとき、子どもに向けてつかうときには、気をつけたいですね。
「普通」じゃなければ、だめ?
「普通」の枠の中にいると、ちょっと安心するってこともあります。でも、「普通」じゃないことは、だめなのことなのか?
だめじゃない!
よくよく考えると、「普通」じゃないことは、当たり前。もしかしたら「普通」というざっくりなグループに所属しているだけで、安心感を得られるのかもしれません。でも、ひとりひとりまったく違う人間なわけです。何から何まで一緒ということはありえない。「普通」という枠が、とても曖昧なものだとわかります。
「普通」という枠にとらわれずに、プラスの側面を見るメリットもあります。何かとびぬけている能力があったり、人より得意なことがあったりすることに、気づくことができます。それを「普通」に所属するために、隠したり出し惜しみしたりしていることは、とてももったいないこと。
足りない部分は補い合えばいいし、得意なことでどんどん誰かの力になっていけばいい。理想かもしれないけれど、学校でクラスを作っていく上では大切なことだし、これは社会に出ても同じなのではないかと思います。
「普通」という言葉に苦しんでいる人もいる
「〇〇ちゃんって、ちょっと人と違うよね」
「〇〇さん、変わった人ですね」
「普通はあんなことしないのに、…」
「○○さんは、普通の子ができることができていません」
など、この「普通」の枠に苦しんでいる人も多くいるのではないでしょうか。人と違うことはダメなの?変わった人ではダメなの?
そんなことはありません。
もし、何か迷惑をかけたり、誰かを困らせたりしているのであれば、「普通」という言葉ではなく、もっと具体的に伝えた方がいい。前にも書いたように「普通」というものさしは、人によって違うから、伝わりにくい。さらには、その言葉で傷つく人もいることを忘れてはいけません。
学校や園などの面談で「普通の子と違う」「普通の子と同じようにできない」と指摘され、悲しい気持ちになっている方の声をよくききます。もしこれを読んでいる方が教育者なら、ご自分の伝え方を見直すきっかけにしていただければと思います。
どんなことが苦手なのか、どういうところで本人が困っているのかを具体的に伝え、一緒に策を練ることが大事。先生自身が困っていることではなく、その子自身が困っていることを共有し、手立てを考えるのが、面談です。そして、それが子どもの成長につながります。
また、ついついやってしまいがちなことが…
「普通」という親のものさしを、子どもに向けてしまうこと。自分を基準に子育てをしがちですが(わたしも含め)、子どもの成長は、誰かの「ものさし」ではかるものではありません。
子どもは子どもなりに、自分のペースで成長しています。他の子と比べられるのは、気持ちのいいものではありません。その子の中の成長を認め、その子の「普通」を理解してあげることが、親としてできるサポートだと思っています。
【まとめ】一人ひとり違っていい!ひとくくりにしない視点をもとう
「普通」ってどんなことなのか?
「普通」というものさしを使って、誰かを枠にはめようとしていないか?
そんな視点をちょっともつだけでも、目の前にいるお子さんへの見方が変わってくると思います。
もちろん、みんなが好き勝手自由に行動していいのか?と言われたら、答えは、NOです。同じ社会で生活していく上でのマナーやルールは大切です。そこを間違えないようにしたいですね。
今、子育て中、不登校だけでなく、何か困り感を感じているお子さんをおもちの方は、まわりの「普通」というものさしで、息苦しく感じることがあるのではないでしょうか。「普通」というものさしは、人によっても時代によっても変わるもの。そこに合わせようとしなくても、大丈夫です。
今、目の前にいるお子さんをしっかり見て、何に困っているのか、今何ができるのかを一緒に考えること。そこに集中してみてください。過去を反省し続けたり、未来を不安に思ったりする必要はありません。できることは、今!です。
「普通」という枠から解放されて、心が軽くなる子どもたちが増えますように…