「不登校」という言葉が世の中に出てきて、ずいぶんと経ちます。以前は「登校拒否」という言葉が使われていました。
登校を拒否しているのか、登校しないのか、登校できないのか…
どんな言葉でまとめても、それは不登校の子どもたちにとっては、あまり心地のいいものではないだろうと思います。
その子はその子でしかない。それなのに、学校に行かないという一点だけで、グループ化されてしまう。グループ化することで、なにかいいことでもあるのかな…と真剣に考えたりしてしまいます。
今日は、不登校の子どもたち(あえて「不登校」という言葉を使っていますが)と向き合うときに大切にしたいことをシェアできればと思います。
これは、不登校の子に限らず、すべての子どもたちに共通していえることかなと思っています。また、子どもだけではなく、大人でも同じようにいえること。
身近に不登校の子どもがいてもいなくも、もし「ちょっと子育てに疲れちゃったな」「まわりに苦手な人がいて…」「子どもにつまく伝わらない」という方がいらっしゃったら、少しはお力になれるかもしれません。
また、もし学校の先生がこれを読んでくださっていたら、ぜひ不登校の子どもたちへの対応に活かしていただけたらうれしいです。
不登校の子どもと向き合う前に…
「不登校の子ども」と言われて、いい気持ちになる子は誰一人いません。学校に行っても行かなくも、その子はその子。その子なりに日々成長していることを、まずはしっかり実感してほしいなと思います。
とはいえ、このままで大丈夫なのだろうか。いつまで続くんだろう。
不安や心配で胸が苦しくなる時期もあるかもしれません。
今までたくさんの子どもたちとかかわってきて思うことは、学校はたしかに大切な学びの場かもしれませんが、唯一の学びの場ではないということ。
つまり、学校に一定期間行っていなかったとしても、悲観することはない。子どもたちにはどんな環境でもたくましく育っていく力が備わっています。
その土台の上で、では実際にどのように子どもたちとかかわっていけばいいのでしょうか。
不登校の子どもと向き合うときに大切なこと① 聴く
もしかしたら、なにも話したくない子もいるかもしれません。会話するのもしんどい時期の子もいるかもしれません。
そんなときは、あえて会話をせずに、同じ空間にいるだけでもいい。その子の無言を聴いてあげてください。
もちろん、話したいことがある子であれば、その話をうんと聴いてあげてください。
子どもが話していることに対して、思わず「それは…」「だって…」などこちらの意見を言いたくなることもあると思いますが、そこはぐっとのみこんで、ただただ聴く。
この聴くときに、どうしてもなにか言いたくなってしまう場合には、メモをとりながら聴くのもいいと思います。子どもの声や話をメモしながら聴くことで、「聴く」ことに徹することができます。
記録をしておくことで、子どもの成長を綴っていくこともできます。
子どもからすると、親が真剣に自分の話を聴いてくれることで安心感を感じたり、話すことで自分の気持ちの整理がついたりすることにもつながります。また、なにも否定されずに話を聴いてもらえることは、子どもだけなく大人でもうれしいことです。
なにかあったときに「話したい」と思える相手がいること、子どもにとって親がそんな存在であれば、これほど安心できる環境はありません。
不登校の子どもと向き合うときに大切なこと② 判断しない
子どもは、まだまだ未熟なところがたくさんあります。大人の力をかりなくてはできないことも。ときには、しっかり教えなくてはいけないこともあると思います。
それでも、気をつけたいことが「判断しない」です。
わたしも、今まで判断してしまい、失敗した経験が多々あります。「言わなければよかった」と思うことも、思い返すとたくさんでてきます…。
そんな失敗から学んだことのひとつが、この「判断しない」。
自分がよかれと思って言っていることが、子どもにとってはまったく「よい」ものではないこともある。自分の判断は、本当に100%正しいのか?と考えてみると、自分もそんなにすごい人間ではないことに気づいたりします。
親は、自分自身の経験からいろいろな判断をしてしまいます。すべて子どもにとっていいことであると信じて。
でも、ちょっと考えてみてください。一人ひとりまったく違う人間で、親子であっても性格も、育っている環境もまったく違います。当たり前ですが、経験も違う。
自分自身の経験上の「よい」という判断は、本当にその子にとっても「よい」ものなのでしょうか。
自分が子どものときを思い出してみると、大人の一方的な判断にカチンときたり、傷ついたり、モヤモヤしたりした経験がある方もいるのではないでしょうか。
子どもとはいえ、一人の人間。判断を押し付けられたり、勝手に判断されたりすることは、気分のいいことではありません。大人も同じですよね。
そして、この「判断しない」は、親自身の気持ちも楽にしてくれます。「〇〇しなくてはいけない」から解放されると、ありのままの自分、ありのままの子どもと接することができるようになっていきます。
不登校の子どもと向き合うときに大切なこと③ 外の目を気にしない
子どもと向き合っているつもりでも、外の目、他の人の声が気になってしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それは、子どもも同じだと思います。
特に、親が外の目や声を気にしていれば、それを子どもは敏感に察知します。「自分は間違ったことをしているのかな」「自分はダメな子なんだ」など、自己否定してしまったり、自信をなくしてしまったり。
大切なことは、他の人の判断ではありません。さきほど、自分が判断しないと楽になるということを書きましたが、それで他人の判断に翻弄されてしまっては元も子もありません。
他の人は、なにも知りません。同じ経験をしていなければ、なにも考えずにあれこれ言う人もいるかもしれません。そんな無責任な目や声に、心を動かされる必要はないと思うんです。
大切なことは、目の前にいる子がどんなふうに成長していくか。通りすがりの人は、その子の成長の一瞬しか見ていません。一瞬しか見ていない人の話は、す~っと聞き流す。
もちろん、信頼できる人、相談できる人がいることは、大切なことです。でも「あれ?ちょっと違うな」「話していても、モヤモヤするな」と感じたら、そっと距離をおくこともあっていいのかなと。
まわりのからの判断で心がゆらいでしまったり、不安や心配にかられてしまったりするのであれば、そっと離れましょう。子どもも親も、判断しないで話を聴いてくれる相手を探すこと。これが、けっこう大きなことだったりします。
【まとめ】不登校に関係なく、その「子」をみること
以前、学校にいたころ、毎年新学期前になると、前の担任の先生からの引き継ぎというのがありました。「この子はこういう子です」みたいな詳しいことまで教えてくれる先生もいたんですが、わたしは「先入観ができてしまうので…」と言って、とりわけ注意が必要なことや大きな出来事だけを教えてもらうようにしていました。
先入観を取り除くのは、とてもむずかしい。まっさらな目で、一人の子と対面したかったんですね。
これは、不登校の子でも同じことが言えます。「去年まで不登校でした」と引き継いだ子が、新学期からなにごともなく学校に来て、一年間楽しそうに過ごした子もいました。
子どもたちは、いつでも変わりたいと思っています。だから、なおさら、大人が過去のことを引きずってみてはいけない。その子がどんな子だったとしても、今、そして、これからどんな子になるのかは、誰にもわからないんです。
登校していても、していなくても、その子には変わりはない。
もし学校の先生が、これを読んでくださっていたら、ぜひ、その子自身をみてあげてください。不登校は、誰かが勝手にカテゴリー化したものにすぎない。今、その子にできる支援を考えてあげてください。判断せずに、話を聴いてあげてください。まわりの判断に苦しんでいる保護者の方に寄り添ってあげてください。
少しでもどなたかのお力になれたら…と願っています。
今、目の前にいる一人の子が安心して毎日を過ごせますように…。