子どもが生まれてから、発達の目安があり、それに遅れていると不安になる。
周りの子たちと比べて、できていないことが多いと心配になる。
そんな経験をされている方も多いのではないでしょうか。
これは、幼児期だけではありません。その後、子どもが成長すれば、悩みがなくなるのか…というと、そうではない。
悩みの中身は変化していくけれど、子育てに悩みや不安はつきものです。
悩んだとき、みなさんは、どうしますか?
家族や友人、信頼できる人に相談しますか?
ママ友に助けを求めますか?
それとも、子育て本やスマホ検索で、情報を集めますか?
いろいろな方法があります。そして、その中でどれかが正解というわけではありません。
いろいろな方法の中から、自分に合った、ご自分のお子さんに合いそうな方法を選択して試してみる。
そこで、うまくいく場合もあれば、そうでない場合もあると思います。
世の中にたくさんある情報は、上手に取捨選択することが大切です。どれかひとつをうのみにするのではなく、参考にして試してみる。そのくらいの気持ちでハウツー本や情報に接することが基本ではないかと思います。
なぜ、うのみにしてはいけないのか?
今日は、「ハウツー本に頼りすぎると陥る危険」を少しご紹介したいと思います。今、目の前に、ちょっと困っていることがある方、どうしたらよいのか不安や心配でいっぱいの方、たくさんの情報をうのみにする前に、まずはこれをご一読ください。
これを読めば、ハウツー情報とうまく付き合うことができるようになるはずです。そして、子育て中の悩みや葛藤があっても「これさえあれば!」というものがわかっていただけると思います。子育ての中で「大事なもの」とは…。ぜひ、最後までおつきあいください。
子育てに「正解」はない
わたし自身、教員として子どもたちと接する中で、悩んだり葛藤したりすることも多くありました。若いころは、「こうすれば、クラスがよくなる!」みたいな本を読み漁ったりした時期もありました。カリスマ性のある先生が書いた本を読み、真似してみたことも…。
でも、そんな経験から、よくよく学んだことは、大事なことは「方法」ではないということ。「これをすると、こうなる」「この方法で、子どもが変わる」そんな簡単にいくものではないということです。
さらに、子どもを育てるということは、とても長い道のりであること。目の前にいる子どもが、すぐに変貌することを期待するものではないのです。
長い長い道のり、時間をかけて、10年後、20年後に、その子がどんな大人になるのか。どんな人生を選択するのか、そこをめざすのが、子育てや教育だと考えます。
今、目の前に大きな課題をもった子がいたとして、その課題をすぐに解決できる方法があれば、飛びつきたくなる気持ちもよく分かります。でも、それが果たして「正解」なのかどうかは、誰にも分からない。
目の前の問題が解決されたとしても、それですべてが解決されるわけではないということを、忘れないようにしたいものです。
子どもはロボットではない
さきほどの書いたように、若いころは教育ハウツー情報をたくさん試しました。びっくりするほど、子どもが変化することもあれば、逆にうまくいかず、子どもたちとの心の距離が生じてしまうこともありました。
そこから学んだことは、子どもたちはロボットではなく、「人」だということ。機械のように、「こんなエラーにはこうやって対処しましょう」とはいきません。
つまり、「こんな問題には、これを使おう」「この行動を変えるには、この方法がいい」
そんな簡単にはいきません。いや、もしかしたら、一見、うまくいっているかのように見えるかもしれません。でも、実際の子どもの心はどうでしょう?
大事なことは、子どもたちの「心」。内面です。大人のいう通りに行動できていたとしても、心が伴っていなければ、大人がいなければ何もできない人間に育ってしまいます。大人がいてもいなくても、自分で判断できる、行動を選択できるようにするには、「心」も成長していていなければなりません。
長年、たくさんの子どもたちと接してきた中で(失敗も重ねてきた中で)、言えることは、「心」の成長にハウツー本(情報)は通用しないということです。
「心」を動かすのは、「心」しかないのです。
意外なことがきっかけになることもある
子育てや教育の「おもしろさ」のひとつでもありますが、子どもは大人が予想していないことに反応することがあります。
「え! そこに反応する?」という想定外の出来事がたくさん起こるのが、子どもの世界。
世の中のハウツー情報を、そのまま自分の子どもに試してみたけど、「まったく違った反応だった」「効果がまったくなかった」ということがあると思います。一方で、小さな小さな何気ないひとことや何気ないことがきっかけで、子どもが変化することもあります。
何がきっかけになるのかは、一人ひとり違う。その変化がいつ訪れるのかも、予期できない。
それをむずかしいと感じるのか、おもしろいと感じるのかで、子どもと接する気持ちが大きく変わってくるのではないでしょうか。
子どもの変化は、ある日突然訪れる
「何度も同じことを言っているのに、まったく変化がない」
そんなもどかしさを感じることもあるでしょう。
言っている側からすれば、「言っても意味がないのかも…」とがっかりすることもあります。でも、意味がないように思われることも、すべて意味がある。
子どもの中に、まったく浸透していないように思えても、実は日々の積み重ねが子どもたちに根付いていることが多くあります。
たとえば「家に帰ったら、くつをそろえる」。毎日、毎日、繰り返し言っても、いっこうに習慣化しない。でも、ある日、お友達の家に遊びに行ったとき、親がいなくても、自分からくつをそろえておじゃましていた…なんてことが、あります。普段は、まったく聞いていないようでも、子どもの中にはちゃんと浸透していたんですね。
これを、意味がなさそうだから、親があきらめてしまっていたら…。もしかしたら、こうはならなかったかもしれません。
子どもといえども、小学生くらいになると、しっかり外の顔と中の顔をもつようになります。学校や家の外ではできるけれど、家の中ではやろうとしない。でも、ちょっと視点を変えてみると、外でできているということは、しっかり浸透している、自分で考えて行動できているともいえるのではないでしょうか。
大事なことは、日々の積み重ね
子どもとかかわる仕事をしていて感じることは、子どもは大人と比べると変化がはやいということです。大人になってから、行動や考え方を変えることは、なかなか大変なことです。自分自身を変えることも、むずかしいですよね。
でも、子どもは、とても柔軟に変化します。担任をしていると、たった1年間で、大きな変化をすることもけっこうあります。もちろん、1年では時間が足りないこともありますが、結果をすぐに求めてはいけません。
今まで出会ってきた子どもたちを見ていると、どうやら、目には見えない変化がある子、「心」の成長を感じる子の多くは、「言葉」や「行動」に大きな影響を受けているように感じます。
子どもの近くにいる大人が、日々どんな言葉を発しているか。また、どんな行動をとっているか。
身近な大人に大きく影響を受けるということを、わたしたち大人は、忘れてはいけません。マイナスな言葉をずっと発していれば、子どもはマイナスな考え方をする癖がつくでしょう。失敗しても、「失敗から学べてよかったね」と言葉をかけ続ければ、失敗を恐れない子になるでしょう。
子どもは、大人が思うよりもずっと、大人のことを見ています。「言葉」と「行動」が伴わない大人は、信用されません。日々の積み重ねは、わたしたち大人自身が毎日どのように「言葉」をつかい、「行動」しているかを試されているといっても過言ではありません。
「もう手遅れ」ということはない
「あのとき、あぁしていれば…」
そう思うこともあるでしょう。
でも、いくら過去を振り返ったとしても、時間を戻すことはできません。過去はたしかに今につながっています。でも、今は、未来につながっている。つまり、今を大事にしていけば、必ず、その結果は未来につながるということです。
「今、起きていることを、なんとかしたい!」と思っているならば、今、これからの行動を変えていくしかない。これから、目の前の子とどう向き合っていくのか。どう語りかけていくのか。自分自身の行動をどう変えていくのか。そこに目を向けるしかないのです。
「あのとき、あぁしなかったから…」という後悔をいくらしたとしても、何も変わりません。「あのとき、あぁできなかったこと」と、今の問題がつながっているのかいないのかは、誰にも分からないこと。
それなら、「もう手遅れ」だと過去をふりかえってあきらめるのではなく、今からできることをコツコツとはじめてみませんか。
子育てや教育に「手遅れ」はないと思っています。いつからでも、はじめられる。変わっていくことができる。繰り返しになりますが、子どもは、とても柔軟です。
不登校で悩んでいる方へ
フリースクールを開室することになって、不登校で悩んでいる保護者の方とお話する機会が増えました。多くの保護者の方々が、不登校である子と向き合い、葛藤しています。
中には「どうしていいのか分からない」と一人で悩みを抱えている方もいらっしゃいます。不登校や子育ての本を読み漁っているという方もいらっしゃいます。
自分の子育てに問題があったのだろうか。
不登校という選択が子どもにとって本当によい判断なのか。
このまま不登校が続くと、大人になったときにどうなるのだろう。
そんなとき、ハウツー情報が目の前にあらわれたら…、藁をもつかむ思いで試してみたいと思われる方もいるのではないでしょうか。
でも、少し待ってください。
本当に大切なことは、登校させることではなく、今のその子の「心」に向き合うことではないでしょうか。登校するという行動そのものだけに目がいってしまうと、とにかく学校に行ってさえすれば安心になってしまいます。でも、果たして、本当にそれで安心なのでしょうか。
不登校が将来どのような影響を与えるのかは、誰にもわかりません。でも、不登校を経験した人たちのその後の人生は、今の過ごし方で変わっていくのだと思います。
子どもたちが安心して学校に通うことができること。これが、大前提ではないでしょうか。「勉強って意外と楽しいな」「友だちっていいな」「先生に出会えてよかった」そんな風に感じられる学校であれば、たくさんの経験を重ね成長していくことができるでしょう。
でも、つらく苦しい学校ならば、そこに身を置いて、心をすり減らしながら、ただ時間だけが過ぎていく…という状況かもしれません。
学校に行くことだけがすべてではない。もちろん、学校が安心して通うことができる場になってほしい。でも、今、実際にそうではないのならば、「行かない」という選択ができる状況をつくってあげてほしいと願います。
「行かない」という状況でも、できることがある。子どもは成長することができる。学ぶこともできる。「できない」から「できる」にシフトしてみると、少し見える世界が変わってくるのでないでしょうか。
今の社会は、たくさんの情報にあふれています。中には「これをすれば、不登校が解決する」というようなものもあるようです。でも、大事なことは、目の前にいる子どもの「心」であるということを、忘れないでほしいと願っています。
今、目の前にいる子の「心」とまずは向き合うこと。「心」の充電をしっかりすること。子どもがもっている力を信じて待つこと。「できる」ことに目を向けて一歩踏み出してみること。一人で抱え込まないこと。
これは、簡単なことではありません。たくさんの葛藤があるはずです。でも、これこそが、本当に大切なことなのではないかと感じています。
【まとめ】大事なことは、子どもの「心」と向き合うこと
不登校に限らず、子育てをしていく中で、悩み、葛藤する場面はたくさんあります。そんなとき、表面に見えている問題を解決しようと焦る前に、まずは、その奥にある、子どもの「心」と向き合うことが、一番なのではないかと思います。
かくいうわたしも、修行中の身。長年、たくさんの子どもたちと接してきても、一筋縄ではいかないことがたくさんあります。でも、一人ひとりの子どもたちの「心」と向き合うことで、子どもたちが自ら変わっていく姿を見てきたことも事実です。
うまくいってもいかなくても、困っていることを相談できる存在がいることも大事!一人で抱え込むことなく、一緒に悩んでくれる人が近くいたら、少し心が軽くなるに違いありません。
今、お子さんのことで、何か悩んでいることがある方、まずは、目に見える困りごとの前に、「その子は何に困っているのか」「どんな気持ちでいるのか」を聴いてあげてください。そして、何ができるのかを試してみる。信頼できる人に相談してみる。自分ができることを探してみる。
もし、やってみて、うまくいかなくても、自分やお子さんを責めたりする必要はありません。大事なことは「どの方法がいいのか」ではなく、お子さんの「心」だからです。
そして、もうひとつ。大切にしてほしいことは、親自身の「心」。お子さんの「心」を大切にするあまり、自分自身の「心」をすり減らしていませんか。親の笑顔、親が元気でご機嫌でいることは、子どもたちのエネルギー源です。自分ケアも忘れずに!
今日は、ハウツー情報とのかかわり方についてお伝えしました。うまく活用していただけたらうれしいです。
横浜のちいさなフリースクール「ぶあの家」では、メール相談を行っております。近くに相談できる人がいないという方は、ぜひお気軽にご相談ください。