不登校状態が続いていくと、だんだんと終わりのない長いトンネルを歩いているような気持ちになる方もいるのではないでしょうか。
わたし自身が「不登校」状態になったのは、子どもの頃ではなく、大人になってから。教員という立場でありながら「不登校」を経験しました。(子どもではないので、正しくは「不登校」ではないんですけど…)
当時は、そんなふうに思いもしませんでしたが、今振り返ると、あの頃の症状や精神状態は、まさに「不登校」だったように思います。
今日は、今、終わりが見えない状況に悩んでいる方や疲れてしまっている方の参考になれればと思っています。もちろん、一人ひとり状況も環境も違えば、不登校になった経緯も違うので、わたし自身の経験がすべての方の参考になるとは限りません。
でも、近くにいる親ができること、本人へ伝えてほしいことなどを具体的にご紹介したいと思います。ひとつでもヒントになるものを見つけていただけたら、うれしいです。
①不登校で見えない出口に苦しくなったら…
不登校が続いていくと「これ、いつまで続くんだろう」「このまま、引きこもりのままになったら…」など不安や心配が募っていくのはないかと思います。わたし自身、親の立場で不登校にかかわったわけではないのですが、不登校中の身であるわたし自身も、この不安にはいつもさいなまれていました。
つまり、親が心配しているようなことを、子どもも心配しているということ。もちろん、子どもなので、大人より経験値が少ないため、想像できる未来は限られているかもしれません。それでも、子ども自身も「このままだったどうしよう」という不安は感じている。
そんなとき、思い出してほしいこと。
それは「必ず出口はある」ということ。どんなに長いトンネルでも、光が見えなくても、歩いていけば出口につながります。これは、本当に終わりの見えない生活をしていたわたし自身が、実際に体験したことだから、自信をもっていえます。
そして、この言葉は、多くの不登校経験者の方々も同じように言っています。心が病んでしまうと、風邪と違い、数日休めば治るわけではありません。その過程には、思った以上に時間がかかることがあります。でも、必ず出口はある。
どんなに絶望的な状況でも、這い上がれそうにない状態でも、時間とサポートがあれば少しずつ出口に近づいていく。たとえ、近づいている実感がまったくなくても…
焦らずに、絶望しないこと。
②不登校でのゴールを「登校」にしない
不登校の子が「学校に行く」と言ったら、喜びますか? 内心は「これで行けるのかな」と期待しつつ、「もしかしたらダメかも…」と不安でもある。そんな状態の方も多いのではないでしょうか。
子ども自身はどうなのか? 子どもにとって大切なことは「安定した精神状態に戻ること」。その延長として「安心して学校に行く」があると思っています。
不登校でのゴールを「登校」にしてしまう先生方はけっこう多い。でも、親も一緒にゴール設定を「登校」にしてしまうと、もしかしたら子どもを苦しめることになるかもしれません。
学校に行かないことはよくないこと。学校に行っていない自分はダメな人間。そんなふうに子ども自身が感じてしまうのは、とても悲しいし、危険なことです。
「学校に行ってようが行ってなかろうが、あなたは価値のある人間なんだよ」「そのままでいいんだよ」ということが、子どもたちにとって大きな安定になります。
また、登校していれば安心というわけでもない。学校で苦しい思いや悲しい思いをしているのであれば、そこに無理して通っていること自体、子どもの心の成長に影響を与えかねません。
不登校は「今日テストがあるから休みたい」「給食で嫌いなものがあるから行きたくない」というレベルではないんです。
③不登校への特効薬は… とにかく休息
わたし自身、学校に行くことができなくなり、体調も悪くなり、いろいろな病院で検査を受けました。脳のMRIまでとりました。あちこち検査をしても体には異常がなく、最終的に心療内科を紹介してもらい、ようやく適応障害という診断に至りました。
わたしの場合、こうやって回復したのには、いくつか要因があるのですが、そのうち一番大きかったのが「休息」です。とにかく休む。やりたくないことはやらなくてもいい。無理をしない。
それに徹するように医者から言われました。家族の協力もあり、本当にこんなにだらけた生活でいいのか…と不安になるような生活を送っていました。
でも、これがよかったんだと思います。波はあるものの、ただただ休むだけでも、ずいぶん体調はよくなりました。休んでいい状況、休める環境を整えてあげることは、特に不登校初期の子どもたちにとってはとても大切です。
不登校になる前に、長い間苦しみながら学校に通っていた子は休息期間が長く必要になるかと思います。でも、休んで充電できれば、次に進むことができる。無理せず、とことん休むこと。波があっていいときもあれば、沈むときもあるかもしれません。でも、沈んだときにはまた休む。その繰り返しが大切です。
④不登校中の子も苦しんでいることを忘れない
不登校期間が続いていくと、子どもたちのストレスが減り、楽しそうな表情が戻ってくることもあるかと思います。「こんなに元気なら、学校に行けるんじゃないか」と思ってしまいそうですが、元気なのは「学校に行かなくていいから」です。
学校に行かない状況だから、楽しく過ごせている。楽しそうだから、もう大丈夫とは限りません。いろいろな原因があるので、一概には言い切れませんが、でも、多くの子どもたちが不登校中でも苦しんでいます。
親に心配をかけないように、学校の存在を忘れるために、今まで無理していた穴を埋めるかのように、楽しく過ごしている子もいます。一見楽しそう、元気そうでも、ふとした瞬間に「学校」を意識することがあるはず。
外から聞こえる登下校中の子どもたちの声、テレビなどで「学校」という言葉が出てきたとき、そんなささいな瞬間に「不登校である自分」を意識することもあります。
⑤不登校でも楽しいことを探していい
不登校が悪いという考えだと、学校を休んでいるのだから楽しいことはしてはダメ!ということになりかねません。
でも、わたし自身、心療内科の先生に「好きなことを好きなだけしていいですよ」と言われました。休んでいて好きなことなんて申し訳ない。働けないのに、好きなことをするなんて…と、はじめは一歩を踏み出せませんでしたが、今思うと、誰に遠慮することもない!
それが治療のひとつなんだと思えば、どうどうと好きなことができるようになりました。そして、自分の「好き」という気持ちを思い出すことで、わたしの場合はどんどん回復していきました。
特に子どもたちは「楽しい」と「もっとやりたい」「もっと知りたい」と心を躍らせます。それが探求心だったり、向上心だったりとつながっていく。何かに挑戦してみる。何かに没頭してみる。何かを極めてみる。そんな時間の使い方をしてみると、不登校でいる自分を受け入れることができるようになるかもしれません。
⑥不登校をどうにかしようと頑張りすぎない
わたしもそうですが、何か物事に直面すると、それを乗り越えよう、解決しようと行動します。行動したくなります。
でも、適応障害になって、その状況を克服しようとすればするほど、苦しくなりました。そして、ある日、どうにかしようとするのをやめてみたんです。原因も探すのをやめて、がんばって何かをするのもやめてみた。さきほどの「休息」ともつながりますが、ただただ休むことだけに専念する。
休んでちょっとエネルギーが出てきたら、好きなことをやって時間を過ごす。「いつになったら学校に戻るんだろう…」なんて、考えたらアウトです。またど~んと突き落とされた気持ちになりますから…。
がんばることをやめる。
おそらく、不登校になっている子どもたちの多くは、すでに十分がんばってきた子だと思うんです。がんばって、無理しながら、なんとか学校に通ってきた経緯がある子。そうなると、せっかく学校から解放されたのに、さらにがんばるなんて…つらすぎます。
がんばってきた分、がんばりすぎちゃった分、がんばらない時間が必要になったんだと考えてみる。がんばってもどうにもならないこともあるんです。
⑦親も子も孤独にならない工夫を
ここが、大きなポイントかなぁと思います。ただ、不登校初期の場合には、子どもにとって刺激になる交流などは避けた方がいいこともあります。嫌なかかわりは避けることもとても大切です。
ただ、不登校が長く続き、子どもたちも十分に休息をとり、エネルギーがたまっていくと、人とのかかわりを求めるようになる子も出てくると思います。
さらに、不登校が長く続けば続くほど、また違う不安や心配が出てくる方もいらっしゃることでしょう。
親も子どもも孤独にならないこと。それが、社会復帰の一歩だと思います。今、あえて「学校復帰」と書かなかったのは、学校に登校することが目的ではなく、社会に戻っていくことを目指すからです。学校にこだわらなくても、学べる場所は少しずつ増えてきました。
学校の役割は大きく2つあると思っているんですが、1つは「学習の基礎・基本を身につける」。これは、学校ではなくてもできることです。2つ目は「社会性を身につける」。集団生活や縦割り活動などを通して、人とのかかわりやルールなど社会に出たときに使う力を身につけるというもの。
この2つ目は、家庭だけでは限界があります。でも、学校だけでしか学べないかというとそうでもない。家から一歩出れば、そこは社会です。社会の誰かとつながることで、社会性を育むことができる。
どこの誰とつながるかは、好きに選ぶことができます。同じような不登校の子どもたちとの出会いを求めるのであれば、フリースクールやフリースペースを探してみてもいいし、習い事をはじめたり、まったく関係ないコミュニティーに参加してみてもいいと思うんです。
子どもが孤独にならないだけでなく、親も孤独にならないこと。これが、とても大切です。
【まとめ】人と比べず、絶望もしない。大丈夫! 必ず出口はある
少しは参考になることがあったでしょうか。ひとつでもヒントとなれば、うれしいです。
わたし自身、教員でありながら「不登校」になったという状態を経験したので、この経験がすべて子どもたちと共通しているものとは限りません。でも、不登校の子どもたちや保護者の方とかかわる中で、自分の経験したことが「不登校」中の子どもたちととても似ていることに気づきました。
子どもは自分の思いや気持ち、状況をなかなかうまく言葉では伝えられません。だからこそ、私が親や先生、子どもたちにかかわる立場にいる人たちに、子どもたちの状況を少しでもわかりやすく伝えられたらいいなと思っています。
数年前、わたしも人生のどん底にいました。夢あってなった教員、大好きだった学校に、突然行けなくなり、拒否反応。それは、光の見えないトンネルを進み続けるようなものでした。進んでも進んでも、前は真っ暗。このまま職を失ったら、自分の子どもはどうなるの? 家のローンは? など途方に暮れたことを思い出します。
でも、なんとかなります。なんとかなって、今、ようやく光の見える外の世界に出ています。
だから「大丈夫」と子どもたちに伝えたい! その経験がいつかその子の大きな大きな根っこになる。絶望しないで。道は必ず続いています。一歩一歩、ときには引き返したり、立ち止まったりしても大丈夫。その子のペースで進んでいけばいい。
子どもたちに笑顔をエネルギーが戻りますように…